折角の休日なのに生憎の雨、普段休日にじっとしていることの無い私だが今日は朝からテレビ。8時過ぎ、思い立って近くの公園へ雨の梅を撮りに行くことにする。 春先には珍しく本格的な雨、近隣では有名な梅の名所だがこの雨の中梅見人はほとんど居ない。時おりチラッと人影が過ぎる程度。ましてや写真を撮る人なぞ皆無。 ひとしきり夢中で撮り、1時間ほど過ぎた。 公園内通路をブラブラ、中国式東屋に差し掛かったところ通路向うの生垣から犬が顔をだし、私の姿を見て2~3歩逃げるように小路を後戻りする。 私は東屋から滴り落ちる雨水をファインダーで覗きながら独り言のように「苛めたりしないから逃げなくていいよ~」と声をかける。 そのまましばし雨飛沫を写し続けた。犬のことなどもうすっかり忘れている。 先ほど犬がいた小路に入り、被写体を求めてゆっくり進む。 ふっと気が付くと4~5m後方に犬。先ほどの犬ではないか~ 「アレッ ついてきたのか・・・」そう呟いて立ち止まる。犬も止まる。ゆっくり進むとゆっくりついて来る。立ち止まって写真を撮っているとじーっと見ている。 「オーイ 雨に濡れて冷たいだろう」「雨宿りできるところに行けば・・・」お座りして私の顔を見ている。 私は無視することにした。 ゆっくり進みながら写真を撮り続ける。梅の花・蕾・牧場の柵・生垣の光る葉・雨宿りの牛達・・・・・・。 犬は徐々に私との距離を詰めてくる。 もうほとんど足元、他人から見ると愛犬散歩中のオジサン、ときには私の一歩前を案内するかのように・・・ 相変わらず雨はしっかり降り続いている。 やがて私と犬一匹は梅林横の広場に出た。チョッと疲れた。ポケットからノド飴を一粒口に入れる。犬は私の動作をじっと見ている。もう一粒取り出してそっと足元の石の上に置いてやる。 すぐ寄って来て匂いを嗅ぐ、プイと顔を背けて離れる。 「オイ、チョッと休憩だ」「舐めてみろよ 野良クン!」 ・・・無視・・・ 「そうだ、知らない人の飴玉は舐めない方がいい」 私、飴をしゃぶりながらしげしげと犬を見る。犬の種類は分らない。若い中型犬のようだ。首輪は嵌っていない。眼差しに野犬の険しさは見られない。率直な目つきをしている。 思い出して腕時計を見る。10時過ぎ、そろそろ帰らないといけない時刻だ。 今日は11時に家内をクルマで実家へ送って行くことになっている。 それに雨中、傘を差しての撮影、しかも苦手な花木の写真、集中力も限界に来ている。 足早に来た道を引き返す。犬が小走りについて来る。 途中、通路沿いに公園の管理倉庫がある。犬はその中に駆け込んだ。 あぁ~そこが君のハウスだったのか「バイバイ!」 やれやれ~彼にも乾いた寝倉があったのだ。 何となくホッとした気分で倉庫前を過ぎ生垣の椿を、もうあまり鮮やかじゃないなーと見ながら駐車場へ向かう。 静かな舗装路に雨音以外の気配が混ざった。ノラ君が追いついて来たのだった。 結局、後先になりながらノラ君は私のクルマまでやって来た。 雨傘を後席床に置くため後ドアを開くとノラ君は一瞬乗り込もうとする体勢になった。 運転席に私が乗り込むとドアの横でお座りしている。私はドアを閉め、濡れたカメラをタオルで拭きカメラバッグに納めた。 犬を見る。視線が合う。 「ご免なぁ、連れて帰れないんだ」「風邪引くなよ・・・」 前を向きキーを差しセルを回す。横を見ると居ない。 クルマを出そうと前を見る。20mほど先、水を跳ねながら斜めに疾走する犬が見えた。 駄文 ご容赦下さい。
by snapshashin
| 2006-02-27 19:42
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